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ブラックバード
 最後に言いたいことはないか。

 死にたくない。

 残念だ。それは認められない。恨むのだったら祖国を恨め。おれたちもお前を殺したくない。

 殺さないでくれ。

 駄目だ。おれたちの同胞は、数え切れないくらい殺された。そして、その死は誰にも知らされていない。むしろお前は仕合わせだ。皆にお前の死が知れわたる。

 いやだ。殺さないで。家に帰りたい。

 おれたちには家がない。全て破壊された。失うものはない。ただ、同じような目に合う同胞を作りたくないだけだ。

 お願いだ。家に帰してくれ。

 無理だ。もう終わったんだよ。お前はここに来なければよかった。おれたちの敵に味方した。

 謝る。このとうりだ。

 もう遅い。この国へ来る前に考えるべきだった。ひとはみな、考えようとしない。そしていざ自分の身が危うくなると真剣に考えるフリをする。

 いやだいやだ。死にたくない。

 もう時間だ。次は、後悔する前に考える人間に生まれ変わることだな。



 
         真夜中に鳴くブラックバード


         こわれた翼で飛んでみて


         生まれてからずっと この時を待ってたはず



            飛べ ブラックバード


            飛べ ブラックバード


            闇の中に射す一条の光に向かえ

     












Bravo の小説・目次







最後の詩は The Beatles の 「Blackbird」から引用。John Lenon & Paul McCartney 作。Bravo 訳。対訳には、アラン・ローゼン/福田昇八 著 「ロックの心 3」 を参照させて頂きました。

by bra-net | 2004-06-26 23:44 | 小説、詩 | Comments(2)
Commented by bra-net at 2004-06-26 23:50
この作品のコメントに Bravo はレスしませんが、コメントは歓迎です。
Commented by MemenCrital at 2004-06-27 00:26
かの国で、この様な状況がこれ以上続かないことを、心より願います。
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