1 2 3 からのつづき。
高速のサービスエリアにはいる。携帯を見ると伝言メッセージが入っている。彼女からだ。朝、叔父が倒れたとの連絡が入ったので動転して約束を忘れた。ごめんなさい、というメッセージだった。あと何通か彼女からのメールも入っていたが、開けずに消去する。
トイレに行き、用を済ませたあと鏡を見る。汚れていそうなので顔を洗う。首は濡らしたタオルで拭く。黒くよごれが付く。タオルの面をかえて何度か拭き、やっとよごれが付かなくなる。
土産物屋を見物しながら通りぬけ、休憩所に着く。備付けの地図を取り、自動給湯の無料の茶を紙コップに注ぎ、テーブルにつき、地図を開け茶を飲む。
周りには家族連れ、アベック、老人のグループがいる。
おれとはあきらかにちがう種族だ。昔はいくぶん不快だった疎外感を味わうが三十歳を過ぎたいまとなっては慣れ親しんだ感情だ。
外に出る。快晴の光が降注ぐ。向こうのベンチにひとり、薄汚れたバイク用の化繊の上着を着てバイク用の革ブーツを履いた同年代の男が座っている。おたがいの存在に気づいてはいるのだが声はかけない。そして彼もまたおなじ疎外感を味わっていることを確信する。おれと彼はこの時だけ、家畜の群に放たれた野生の獣だ。
つづく